遺産分割調停の申立てには、申立書のほかに、相続人を示す戸籍と、遺産の内容を示す資料が必要です。特別受益や寄与分を主張する場合は、それを裏付ける資料も自分で用意します。
書類がそろわないときの扱いは家庭裁判所によって異なります。早めに申立先へ確認しながら進めてください。
この記事で分かること
- 調停の申立てに必要な書類の全体像を説明します。
- 戸籍と遺産の資料の集め方を紹介します。
- 特別受益・寄与分などの主張を裏付ける資料をまとめます。
- 書類をそろえる手順と、取得にかかる費用を確認します。
遺産分割調停で必要になる書類
裁判所の案内では、主に次の書類が必要とされています。
| 書類 | 何を示すか | 入手先 |
|---|---|---|
| 申立書と相手方の人数分の写し | 誰が何を求めるかを示します。 | 裁判所の書式を使います。 |
| 事情説明書、進行に関する照会回答書 | これまでの経緯や希望を伝えます。 | 裁判所の書式を使います。 |
| 故人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍 | 相続人の範囲を示します。 | 市区町村の窓口です。 |
| 相続人全員の住民票または戸籍附票 | 現在の住所を示します。 | 市区町村の窓口です。 |
| 登記事項証明書、固定資産評価証明書 | 不動産の内容と評価の資料です。 | 法務局、市区町村です。 |
| 通帳の写しまたは残高証明書、有価証券の資料 | 預貯金などの遺産を示します。 | 金融機関、証券会社です。 |
戸籍に代えて法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合がありますが、申立先の家庭裁判所に確認してください。書式や最新の必要書類は、裁判所「遺産分割調停」で確認できます。
戸籍の集め方
相続人の範囲は、故人の出生から死亡までの戸籍でたどります。
- 広域交付:2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できます(戸籍法120条の2)。請求できるのは本人・配偶者・父母などの直系尊属・子などの直系卑属で、兄弟姉妹の戸籍は請求できません。
- 広域交付の注意:郵送や代理人による請求はできず、顔写真付きの本人確認書類が必要です。コンピュータ化されていない一部の戸籍も対象外です。
- 法定相続情報証明制度:法務局に戸籍一式と一覧図を提出すると、認証文付きの写しを無料で受け取れます。一覧図は5年間保存され、再交付を申し出られるのは最初の申出人です。詳しくは法務局「法定相続情報証明制度」をご覧ください。
遺産の資料の集め方
- 不動産:登記事項証明書と固定資産評価証明書で確認します。市区町村の名寄帳で、その市区町村内の土地・家屋を確認できる場合もあります。
- 所有不動産記録証明書:2026年2月2日から、相続人も故人名義の不動産の一覧を請求できます。ただし請求書の氏名・住所で検索するため、すべてが抽出されるとは限りません。
- 預貯金:相続開始日時点の残高証明書を金融機関に請求します。入出金の内容は取引履歴で確認します。相続人の一人が単独で取引経過の開示を求められるとした最高裁判所 平成21年1月22日判決があります。
- 有価証券:証券会社などの取引残高報告書などで確認します。
主張を裏付ける資料
特別受益(一定の遺贈・贈与の考慮)や寄与分(特別な貢献の考慮)は、主張する側が資料で裏付ける必要があります。資料がなければ、最終的に取り上げられないこともあります。
- 生前贈与:振込記録、贈与契約書、不動産の登記事項証明書など。
- 介護などの貢献:要介護認定の資料、介護サービスの記録、介護日誌、支出の領収書など。
- 不動産の評価:不動産会社の査定書、固定資産評価証明書など。
- 使途が分からない出金:通帳や取引履歴、出金の時期が分かる記録など。
生前贈与や介護の事実があるだけで、特別受益や寄与分が当然に認められるわけではありません。金額・期間・目的が分かる資料を、時系列で整理しておくと説明しやすくなります。
書類をそろえる手順
- 故人の死亡の記載のある戸籍から、出生までさかのぼって戸籍を集めます。
- 相続人全員の戸籍と、住民票または戸籍附票を集めます。
- 不動産・預貯金・有価証券の資料を集め、財産目録の形に整理します。
- 主張がある場合は、裏付け資料を時系列でまとめ、一覧表を作ります。
- 申立書と事情説明書などを作り、相手方の人数分の写しとともに提出します。
資料は、相続人として正当に取得できるものを集めてください。他の相続人の通帳を無断で持ち出したり、書類を書き換えたりしてはいけません。手元にない資料は、調停の中で提出を求めてもらえないか、調停委員会に相談する方法もあります。
書類に関する期限と注意点
寄与分を主張する場合、家庭裁判所が審判で申立期間(1か月以上)を定めることがあり、期間を過ぎた申立ては却下されることがあります(家事事件手続法193条)。
相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益・寄与分は考慮されません(民法904条の3)。期限が近いときは、資料集めと並行して申立ての準備を進めてください。
なお、2026年9月時点で、家事調停はオンラインでは申し立てられません。書類は家庭裁判所に提出します。
書類の取得にかかる費用
- 戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円(標準額。実際の額は市区町村の条例によります)。
- 登記事項証明書1通600円(書面請求。オンライン請求は送付520円、窓口交付490円)。
- 所有不動産記録証明書は、検索条件1件につき1通1,600円(書面請求)です。
- 法定相続情報一覧図の写しは無料です(前提となる戸籍の取得には手数料がかかります)。
いずれも2026年9月時点の額です。残高証明書などの手数料は金融機関ごとに異なります。弁護士に依頼する場合の費用は、弁護士費用のページでご確認ください。
よくある質問
Q.戸籍がそろわないと申し立てられませんか?
A.相続人の範囲が分かる戸籍は、基本的に必要です。ただし、遠方の市区町村から取り寄せるために時間がかかる場合の扱いは、家庭裁判所によって異なります。期限が迫っている事情も含めて、申立先に相談してください。
Q.相手が持っている通帳の中身は、どうすれば確認できますか?
A.相続人は、金融機関に対して、故人名義の口座の取引経過の開示を単独で求めることができます(最高裁判所 平成21年1月22日判決)。必要な書類や手数料は金融機関ごとに異なります。他の相続人が持っている通帳を無断で持ち出すことは避けてください。
Q.提出した書類は、どこまで相手方に見られますか?
A.申立書は、相手方の人数分の写しを提出します。提出した資料の取扱いや、知られたくない情報の扱いは家庭裁判所の運用によって異なるため、申立ての前に申立先へ確認してください。
まとめ
- 調停には、申立書のほかに相続人を示す戸籍と遺産の資料が必要です。
- 戸籍は広域交付や法定相続情報証明制度を使うと集めやすくなります。
- 特別受益・寄与分は、主張する側が資料で裏付けます。
- 手元にない資料は、調停の中で提出を求める方法もあります。
- 書類の要否や不足時の扱いは、申立先の家庭裁判所に確認しましょう。
協議の段階で必要な書類は遺産分割協議の進め方と必要書類で解説しています。相続人や財産の調査は相続人・相続財産調査のご相談、調停への対応は相続調停・審判・訴訟への対応のページをご覧ください。