遺産分割調停にかかる期間は、事案によって大きく異なります。最高裁判所の報告書によると、令和4年の遺産分割事件の平均審理期間は12.9か月、平均期日回数は5.2回で、1年を超えたものは35.0%でした。
争点が多いほど時間がかかりやすいため、申立ての前に資料と希望を整理しておくことが大切です。
この記事で分かること
- 調停にかかる期間の統計と、その見方を説明します。
- 長引きやすい事情と、事前にできる準備を紹介します。
- 調停中も進む期限と、生活費を確保する方法をまとめます。
- 早く終えるための選択肢を確認します。
遺産分割調停にかかる期間の目安
最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第10回)によると、令和4年に終わった遺産分割事件の審理期間は次のとおりです。
| 審理期間 | 割合(令和4年) |
|---|---|
| 6か月以内 | 32.8% |
| 6か月超1年以内 | 32.2% |
| 1年超2年以内 | 23.8% |
| 2年超3年以内 | 7.5% |
| 3年超 | 3.7% |
これは全国の統計です。平均審理期間は12.9か月、平均期日回数は5.2回でした。個別の事件がどれくらいかかるかは、争点の数や当事者の状況によって変わります。出典は最高裁判所の報告書(第10回)第5章です。
調停が長引きやすい事情
調停では、相続人の範囲、遺言の有無と効力、遺産の範囲、評価、特別受益・寄与分、分け方の順に検討が進みます。次のような事情があると、途中の段階で時間がかかりやすくなります。
- 相続人の範囲や遺産の範囲に争いがあり、先に訴訟での解決が必要になる場合。
- 不動産の評価が折り合わず、査定や鑑定が必要になる場合。
- 特別受益や寄与分の主張があり、古い資料を集める必要がある場合。
- 使途が分からない出金など、付随する問題も一緒に話し合う場合。
- 当事者が多い、遠方に住んでいる、期日に出席できないなどの事情がある場合。
申立て前に整理しておきたいこと
- 相続人の範囲:戸籍を集めて確定します。
- 遺産の一覧:不動産・預貯金・有価証券・負債を、資料とともに一覧にします。
- 評価の資料:不動産の査定書や固定資産評価証明書を用意します。
- 争点のメモ:何が決まっていて、何で対立しているかを書き出します。
- 希望の整理:譲れない点と、調整できる点を分けておきます。
資料と争点が整理されていると、期日で確認する内容が絞られます。弁護士に依頼する場合も、この整理があると相談が進めやすくなります。
期間を延ばさないための進め方
- 申立ての前に、戸籍と遺産の資料をそろえます。
- 争点を絞り、資料で裏付けられる主張から整理します。
- 期日で求められた資料は、次回までに提出します。
- 合意できる部分は先に整理します。事件の一部だけ調停を成立させることもできます(家事事件手続法268条2項)。
- 出席が難しいときは、ウェブ会議や受諾書面の利用を家庭裁判所に相談します。
当事者の出席が難しい場合などには、家庭裁判所が職権で「調停に代わる審判」により結論を示すことがあります(284条)。告知を受けた日から2週間以内に異議が出ると、この審判は効力を失います。調停が不成立になると審判に移り、結論が出るまでさらに時間がかかることがあります。
調停中に注意したい期限
- 相続税:申告が必要な場合、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します(相続税法27条1項)。調停中でも延びません。
- 相続登記:相続の開始と取得を知った日から3年以内に申請します(不動産登記法76条の2)。調停が長引くときは、相続人申告登記で申し出た人の義務を果たせます。
- 10年ルール:相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益・寄与分は考慮されません(民法904条の3)。10年を過ぎた後は、調停の申立ての取下げに相手方の同意が必要です(家事事件手続法273条2項)。
調停中の生活費と費用の考え方
調停が続く間の生活費や葬儀費用などが心配な場合は、次の方法があります。
- 預貯金の払戻し制度:各相続人は「相続開始時の残高×3分の1×法定相続分」まで、単独で払戻しを受けられます(民法909条の2)。上限は1つの金融機関につき150万円です。例えば相続人が子2人で残高600万円の場合、600万円×1/3×1/2=100万円までとなります。
- 仮分割の仮処分:調停や審判の申立て後、債務の弁済や生活費のために必要と認められれば、特定の預貯金を仮に取得できる場合があります(家事事件手続法200条3項)。他の相続人の利益を害するときは認められません。
払戻しを受けた分は、遺産の一部分割で取得したものとみなされます。調停の申立費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円と郵便切手です(2026年9月時点)。弁護士費用は弁護士費用のページでご確認ください。
よくある質問
Q.途中で取り下げることはできますか?
A.調停の申立ては、事件が終わるまで取り下げられます(家事事件手続法273条1項)。ただし、相続開始から10年を過ぎた後は、相手方の同意が必要です。取り下げても遺産分割が終わるわけではないため、その後の進め方を決めてから判断してください。
Q.仕事があり、平日の期日に行けません。
A.家庭裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聴いたうえで、電話会議やウェブ会議で参加できる場合があります(家事事件手続法258条1項・54条)。弁護士に依頼し、代理人に出席してもらう方法もあります。まずは申立先の家庭裁判所に相談してください。
Q.相続税の申告期限に、調停が間に合いません。
A.調停中でも期限は延びないため、未分割の財産は法定相続分などで取得したものとして申告します(相続税法55条)。この段階では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は使えません。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出しておけば、申告期限から3年以内に分割したときに適用を受けられる場合があります。詳しくは税理士に確認してください。
まとめ
- 令和4年の統計では、平均審理期間12.9か月、1年超が35.0%でした。
- 期間は争点の数や当事者の状況で変わり、個別の見通しは一概に言えません。
- 争点と資料を整理してから申し立てると、話合いが進みやすくなります。
- 相続税・相続登記・10年ルールの期限は、調停中も進みます。
- 生活費が必要なときは、払戻し制度や仮分割の仮処分を検討します。
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