遺産分割調停が不成立になったら?審判の流れと判断に必要な資料

遺産分割調停が不成立で終わると、そのまま審判の手続きに移ります。調停の申立て時に審判の申立てがあったとみなされるため、新たな申立ては不要です(家事事件手続法272条4項)。

審判では、家庭裁判所が各相続人の主張と資料をもとに、一切の事情を考慮して分け方を決めます。不服申立て(即時抗告)は審判の告知を受けた日から2週間以内に限られるため、告知日をすぐに確認してください。

目次

この記事で分かること

  • 調停と審判の違いと、審判では扱えない問題。
  • 審判で分け方を決めるときの基準と、分割の方法。
  • 審判に向けて準備したい資料。
  • 審判の流れと、即時抗告・相続税・相続登記の期限。

遺産分割審判とは|調停との違い

遺産分割審判とは、話合いで遺産の分け方が決まらないときに、家庭裁判所が分け方を決める手続きです。

項目 調停 審判
結論の決め方 相続人全員の合意で決まる。 家庭裁判所が判断する。
扱える問題 合意すれば葬儀費用や使途不明金も含めて解決できる。 葬儀費用や使途不明金などは原則として扱えない。
結論への不服 合意しなければ成立しない。 告知から2週間以内に即時抗告ができる。

審判で付随問題(葬儀費用や使途不明金など)を原則として扱えないことは、京都家庭裁判所の案内に基づきます。使途不明金の返還などは、別に訴訟で争う場合があります。

相続人の範囲や、ある財産が遺産かどうかに争いがあるときは、先に人事訴訟や民事訴訟での解決が必要な場合もあります(大阪家庭裁判所の案内)。全体の進め方は遺産分割協議がまとまらないときの進め方をご覧ください。

審判で判断される内容と判断の基準

取得額の計算と「一切の事情」

審判では、まず各相続人の取得額を計算します。基本は法定相続分(遺言で相続分の指定があればその割合)です。

特別受益(一部の相続人が受けた遺贈や、生計の資本などとしての贈与)が認められれば、取得額に反映されます。介護などによる特別の貢献(寄与分)も同様です。ただし、贈与や介護の事実だけで当然に認められるわけではありません。

そのうえで、誰が何を取得するかが決まります。遺産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況など、一切の事情が考慮されます(民法906条)。

相続開始から10年を過ぎた後の分割では、原則として特別受益・寄与分は考慮されません(民法904条の3)。10年以内に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などは例外です。調停を10年以内に申し立てていれば、審判もその時に申し立てたものとみなされるため、この例外に当たると考えられます。

分割の方法

  • 現物分割:土地は長男、預金は長女のように、遺産をそのまま分ける方法です。
  • 代償分割:一人が遺産を取得し、他の相続人に代償金を払う方法です。審判では「特別の事情」が必要で(家事事件手続法195条)、払う人に資力があることも必要です(京都家庭裁判所の案内)。
  • 換価分割:遺産を売って代金を分ける方法です。家庭裁判所は競売や、相続人の意見を聴いたうえでの任意売却を命じることがあります。競売を望む相続人がいれば、任意売却は命じられません(同法194条)。
  • 共有分割:相続人の共有にする方法です。将来、共有の解消で問題が生じる可能性があります。

審判に向けて準備したい資料

寄与分や特別受益などの事実に争いがあれば、主張する側が資料で証明する必要があります。資料がなければ、最終的に取り上げられないこともあります(大阪家庭裁判所の案内)。次のような資料を補いましょう。

資料の例 何を示すための資料か
固定資産評価証明書、不動産の査定書 不動産などの評価額を示す。
預貯金の取引履歴、贈与契約書、登記事項証明書 生前贈与の有無と金額を示す。
要介護認定の資料、介護サービスの記録、介護の日誌 介護などの貢献の内容を示す。
預金の残高証明書、融資の見込みが分かる資料 代償金を支払う資力を示す。

被相続人名義の預金の取引履歴は、相続人の一人からでも金融機関に開示を求められます(最高裁判所平成21年1月22日判決)。他の相続人が保管する通帳の無断持ち出しなどは避けてください。

調停不成立から審判の確定までの流れ

  1. 調停が不成立で終わると、審判に移ります(申立書は不要)。
  2. 家庭裁判所の指示に沿って、希望する分け方と理由を書面と資料で主張します。
  3. 必要に応じて、事実の調査や証拠調べが行われます。評価に争いがあれば鑑定(専門家による評価)が行われ、費用がかかることもあります。
  4. 家庭裁判所が審判をし、当事者に告知されます。
  5. 不服がある相続人は、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告ができます(家事事件手続法86条・198条1項1号)。抗告状は審判をした家庭裁判所に出し(同法87条)、高等裁判所で改めて審理されます。
  6. 期間内に即時抗告がなければ、審判は確定します(同法74条)。その後、審判の内容に沿って払戻しや登記などを進めます。

裁判所の遺産分割調停の案内でも、不成立の場合は自動的に審判に移ると説明されています。

「調停に代わる審判」が出る場合

当事者全員の出席が難しい場合などは、家庭裁判所が調停に代わる審判で結論を示すこともあります(家事事件手続法284条)。告知を受けた日から2週間以内に異議が出ると効力を失い、通常の審判に移ります(同法286条・279条)。異議がなければ、確定した審判と同じ効力を持ちます(同法287条)。

審判に関係する期限と並行して進む手続き

相続税や相続登記の期限は、審判中も進みます。

手続き 期間と起算点 期限までにすること
即時抗告 審判の告知を受けた日から2週間(家事事件手続法86条) 審判をした家庭裁判所に抗告状を出す。
調停に代わる審判への異議 告知を受けた日から2週間(同法286条・279条) 家庭裁判所に異議を申し立てる。
寄与分の申立て 家庭裁判所が1か月以上の期間を定めることがある(同法193条) 期間内に(定めがなくても早めに)寄与分を定める処分の審判を申し立てる。
相続税の申告・納税 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条1項) 未分割でも法定相続分などで申告する。
相続登記の申請 相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内(不動産登記法76条の2) 相続人申告登記などをし、分割成立後3年以内に分割内容で登記する。

相続人申告登記で義務を果たせるのは申し出た本人だけで、持分は登記されません。2024年4月1日より前の相続では、同日と知った日の遅い方から3年です。

相続税を未分割で申告する場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に出せます。申告期限から3年以内に分割すれば、配偶者の税額軽減などを受けられる可能性があるため、税理士に確認してください。

よくある質問

Q.審判で自宅を取得したいと希望すれば認められますか?

A.希望は考慮されますが、認められるとは限りません。家庭裁判所は、各相続人の生活の状況など一切の事情を考慮して判断します(民法906条)。代償金を払って取得したいなら、資力を示す資料を準備しましょう。

Q.審判で決まった代償金が支払われないときはどうなりますか?

A.代償金の支払を命じる審判が確定していれば、地方裁判所に強制執行を申し立てられます(家事事件手続法75条)。相手の財産状況によっては回収が難しいこともあるため、弁護士に相談してください。

Q.審判の途中でも、話合いで解決できますか?

A.可能性はあります。家庭裁判所は、当事者の意見を聴いて、いつでも事件を調停(話合いの手続き)に付することができます(家事事件手続法274条1項)。合意できそうなら家庭裁判所に伝えてみてください。判断は家庭裁判所が行います。

まとめ

  • 調停が不成立になると自動的に審判に移り、新たな申立ては不要です。
  • 審判では、認められた特別受益・寄与分も反映し、一切の事情を考慮して分け方が決まります。
  • 付随問題や、相続人・遺産の範囲の争いは、別の手続きが必要になることがあります。
  • 主張は、評価・贈与・介護・支払能力などの資料で裏付けましょう。
  • 即時抗告は告知から2週間以内です。相続税・相続登記の期限も確認してください。

まずは審判の告知日と、主張を裏付ける資料を確認しましょう。準備に不安があれば、相続調停・審判・訴訟への対応や遺産分割のご相談をご覧ください。

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この記事を書いた人

岩本尚光のアバター 岩本尚光 弁護士(静岡県弁護士会所属)

弁護士(静岡県弁護士会所属)。弁護士法人HOPE法律事務所。慶應義塾大学大学院法務研究科修了。相続は、財産の問題であると同時に、ご家族の関係が関わる問題でもあります。遺産分割、遺留分侵害額請求、相続放棄、遺言書の作成など、手続の見通しを分かりやすくお伝えしながら、できるだけ争いを大きくしない解決を心がけています。静岡市葵区(JR静岡駅 徒歩圏)を拠点に、静岡県全域のご相談を承っています。

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