遺産分割調停は、家庭裁判所で、調停委員会を交えて相続人全員が遺産の分け方を話し合う手続きです。申立て後に期日が複数回開かれ、合意できれば調停成立となり、合意できなければ審判の手続きに移ります。
相続開始から10年が近い場合は、期限との関係を先に確認してください。
この記事で分かること
- 遺産分割調停の仕組みと、協議・審判・訴訟との違いを説明します。
- 申立人・相手方・申立先と、必要な資料を紹介します。
- 申立てから成立・不成立までの流れをまとめます。
- 調停中にも進む期限と費用を確認します。
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、遺産の分け方の話合いがまとまらないときなどに、家庭裁判所で話し合い、合意による解決を目指す手続きです(民法907条2項)。
話合いは、裁判官と調停委員からなる調停委員会が進めます。調停委員は双方の事情を聴き、必要に応じて資料の提出を求めたり、解決案を示したりします。
| 手続き | 内容 | 主な場面 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議 | 相続人全員で話し合い、合意します。 | 最初に行います。 |
| 遺産分割調停 | 家庭裁判所で、調停委員会を交えて話し合います。 | 協議がまとまらないときに利用します。 |
| 遺産分割審判 | 裁判官が分け方を決めます。 | 調停が不成立のときに移行します。 |
| 訴訟 | 裁判所が判決で判断します。 | 遺言の効力など、前提に争いがあるときに必要になる場合があります。 |
申立てができる人・相手方・申立先
- 申立人:相続人のほか、包括受遺者(遺言で遺産の全部や一定割合を譲り受けた人)や、相続分を譲り受けた人も申し立てられます。
- 相手方:申立人以外の相続人全員です。
- 申立先:相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。
相続人の範囲、遺言の効力、遺産に含まれるかどうかといった前提に争いがあり、調停で合意できないときは、先に訴訟で解決が必要になる場合があります。
葬儀費用や使途不明金など、本来は遺産分割の対象ではない問題も、調停では相続人全員が合意すれば一緒に解決できます。ただし、審判では原則として扱えません。
申立ての前に準備する資料
- 申立書と、相手方の人数分の写し。
- 事情説明書や、進行に関する照会回答書などの書類。
- 故人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と住民票(または戸籍附票):相続人の範囲を確認するための資料です。
- 登記事項証明書、固定資産評価証明書、通帳の写しや残高証明書など:遺産の内容を示す資料です。
法定相続情報一覧図の写しで戸籍に代えられる場合がありますが、申立先の家庭裁判所に確認が必要です。書式や最新の必要書類は、裁判所「遺産分割調停」で確認できます。なお、2026年9月時点で家事調停はオンラインでは申し立てられず、裁判所は2028年(令和10年)6月までに対象となる予定としています。
申立てから調停成立までの流れ
- 戸籍や遺産の資料を集め、申立書を作ります。
- 家庭裁判所に申立書と資料を提出し、収入印紙と郵便切手を納めます。
- 家庭裁判所から、申立人と相手方に期日の連絡が届きます。
- 期日では、調停委員が原則として時間を分け、当事者から順番に事情を聴きます。
- 期日を重ねて論点を整理し、合意を目指します。
- 合意できれば調停成立、合意できなければ審判の手続きに移ります。
話合いの進み方
大阪家庭裁判所の案内では、調停は概ね次の順に検討されます。
- 相続人の範囲を確認します。
- 遺言書の有無と、その効力を確認します。
- 遺産の範囲を確定します。
- 遺産を評価します。
- 特別受益・寄与分を検討します。
- 具体的な分け方を決めます。
特別受益(生前贈与などの考慮)や寄与分(特別な貢献の考慮)に争いがあるときは、主張する側が資料で裏付ける必要があり、資料がなければ取り上げられないこともあります。
期日への参加方法
期日は複数回開かれるのが一般的です。最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第10回)によると、令和4年の遺産分割事件の平均期日回数は5.2回でした。
家庭裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聴いたうえで、電話会議やウェブ会議で期日に参加できる場合があります(家事事件手続法258条1項・54条)。2026年5月21日の改正で、遠方に住んでいる場合に限らないことが明確になりました。
遠方に住むなどで出席が難しい人は、調停条項案を受諾する書面を提出する方法もあります。他の当事者が期日で受諾すれば、合意が成立したものとみなされます(270条)。
調停の終わり方
- 調停成立:合意の内容を調書に記載すると成立し、確定した審判と同じ効力があります(268条)。
- 調停に代わる審判:家庭裁判所が相当と認めるときに、職権で結論を示します(284条)。告知を受けた日から2週間以内に異議が出ると効力を失い、審判の手続きに移ります(286条・279条)。異議がなければ、確定した審判と同じ効力があります(287条)。
- 不成立:調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ、新たな申立てをしなくても審判の手続きが始まります(272条4項)。
調停中も進む期限
- 10年ルール:相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益・寄与分が考慮されません(民法904条の3)。期限までの調停の申立ては、家庭裁判所への遺産分割の請求に当たると考えられています。2023年4月1日より前の相続には経過措置があります。
- 相続税:申告が必要な場合、期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。調停中でも期限は延びないため、未分割の財産は法定相続分などで取得したものとして申告します。
- 相続登記:不動産を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2)。調停が長引くときは、相続人申告登記で申し出た人の義務を果たす方法があります。
調停にかかる費用
- 申立ての費用:被相続人1人につき収入印紙1,200円と、連絡用の郵便切手です(2026年9月時点。切手の額は裁判所ごとに異なるため、申立先で確認してください)。
- 書類の取得費用:戸籍や登記事項証明書などの手数料がかかります。
- 弁護士費用:依頼する場合は、弁護士費用のページでご確認ください。
よくある質問
Q.相手方と顔を合わせるのが不安です。
A.調停委員は、原則として当事者から時間を分けて話を聴くため、話合いの間ずっと同じ席にいるわけではありません。安全面などで不安があるときは、事前に家庭裁判所へ伝えて相談してください。
Q.弁護士に依頼しないと申し立てられませんか?
A.本人でも申し立てられます。裁判所のウェブサイトで、申立書の書式を確認できます。ただし、特別受益や寄与分の主張、不動産の評価など争点が多い場合は、弁護士に依頼すると、資料の整理や主張の組み立て、期日への同行などを任せられます。
Q.調停で決まったことを相手が守らない場合はどうなりますか?
A.調停調書には確定した審判と同じ効力があるため、代償金の支払など金銭の支払を定めた条項があれば、強制執行を申し立てられる可能性があります。どの手続きをとるかは内容によって異なるため、弁護士に相談してください。
まとめ
- 遺産分割調停は、家庭裁判所で調停委員会を交えて相続人全員で話し合う手続きです。
- 申立先は相手方のうち1人の住所地などの家庭裁判所で、費用は1,200円と郵便切手です。
- 話合いは、相続人の範囲から分け方まで、順を追って進みます。
- 合意できれば調停成立、できなければ審判の手続きに移ります。
- 10年ルールや相続税、相続登記の期限は、調停中も進みます。
協議の段階でお困りの場合は、遺産分割協議がまとまらないときの進め方もご覧ください。調停の申立てや期日への対応は、相続調停・審判・訴訟への対応や遺産分割のご相談のページでご案内しています。